2014年9月5日金曜日

【閉店しました】地上げに抵抗する220円ラーメン屋「鳥竹」(神奈川・川崎)【前編】

ラーメン(220円)。2014年9月

用事があって川崎を訪問。以前から気になっていた「食道園」(蒲田の食道園とはたぶん関係ない)で、冷麺でも食ってから帰ろう——。そう思って、ぶらぶらと歩いていった。そしたら、意図せず、かつて何度か訪れたことのあったあの場所に行き着いた。

2014年10月(提供:フクシ)
2014年10月(提供:フクシ)

川崎市川崎区東田町9。いわゆる「地上げ」の現場である。それも単なる地上げではない。いくつもの暴力団組織が入り乱れ、泥沼化した、曰く付きの場所なのだ。

不動産関係者のあいだでは「川崎案件」と呼ばれていたらしい。経緯などは、この記事が詳しい。

そもそも、ここはどんな場所なのか。2011年11月に訪れた際の写真が残っていたので、まずはそちらからご覧いただきたい。

2011年11月
現場は、川崎駅西口から徒歩数分の一角。川崎市役所にも近く、周囲には、再開発で建ったと思われる大型マンションやビルが建ち並ぶ(写真奥)。

そんななか、この場所は、最近までバラックのような飲食店が所狭しと林立する歓楽街だったらしい(写真中央)。

しかし2011年当時、飲食店の大半はすでに取り壊され、その跡地は広大なコインパーキングになっていた(写真手前)。

そう。現場は、一見すると何の変哲もないコインパーキングなのである。ひとつだけ、おかしな点があるのを除けば。


ご覧の通り。駐車場のド真ん中。車が駐まっているべき場所に、車と並んで1軒の建物が駐まっている(?)のだ。

当時、この建物はすでに使用されていない様子だった。所有者は地上げからこの物件を守り抜く覚悟らしく、「解体禁止 鳥竹所有者」という貼り紙が出ていた。

看板などはすでに出ていなかったが、この貼り紙で、この建物がかつて「鳥竹」という屋号の飲食店だったことがわかる。名前からして焼鳥屋に間違いない。

「東京地裁にて係争中」の貼り紙もある。ここは川崎なので横浜地裁が管轄のはずだが、東京の会社が関係しているのだろうか。


さらに、その左側に掲示された貼り紙を読んでみると、この駐車場のアスファルトの下に隠された、ひとつの秘密が明らかになる。

「現在はパーキングエリアとして、全体に舗装がなされていて、目視できませんが、川崎市建築基準法施行細則19条の規定により、建築基準法42条2項道路が、法律上存在します」
「現実に家屋番号9番3の9の建物があるので、土地所有者・建物所有者等の承認がない限り、2項道路の廃道申請は出来ません」
「よって建築確認申請行為などは、事実上不可能になると思われます」

要するに、

  • ここはかつて飲食店街でした。いまでは、この「鳥竹」だけが残っています。
     
  • 飲食店街だったころ、もちろん、店の前には道路がありました。
     
  • 実は、いまでもその部分は、法律に則ったれっきとした道路です。
     
  • 駐車場にされちゃったので見えませんけど、市役所も知ってます。
     
  • 建物がある限り、そこへ通じる道路を廃止できないことになっています。
     
  • そして、道路がある限り、その上に建物を建ててはいけないことになっています。
     
  • よって、いまコインパーキングになってるこの土地に建物を建てるのは無理です。残念でしたね^^

ということだと思われる。


道路は、この土地を東西に貫いている。つまり、道路の部分に建物を建てられないとなると、土地が分断されてしまう。それでは大きな建物が建てられず、せっかくあの手この手を使って手に入れた広大な土地の価値が半減してしまう。

「鳥竹」側も、それを狙って道路に着目したのかもしれない。そして、地上げ屋側は建物を建てるわけにいかず、かといって駅前の一等地にあるこの土地を活用せずに腐らせておくこともできず、苦肉の策としてコインパーキングにしたのだろう。

では、建物を建てるのはダメなのにコインパーキングはいいのか、という話になる。

法律のことはよくわからない。しかし、この現場を見る限り、かつて建物だった部分が駐車区画になり、道路だった部分が通路になっている。それゆえ、車と並んで焼鳥屋が「駐まっている」という滑稽な光景が生まれた。

つまり、道路として指定されているルートを障害なく通行するができるようにさえなっていれば、セーフなのだろう。


さて、以上が2011年当時の状況である

時期は飛んで、2014年9月。この「鳥竹」は、思わぬ変貌を遂げていた。このまま続けたいところだが、長くなりすぎた。続きは後編に譲りたいと思う。


→後編



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2014/11/11 写真を追加