2014年12月5日金曜日

妻家房 四谷本店(東京・四谷三丁目)

水冷麺定食(850円)の冷麺。2014年11月

これまで紹介したように、いろんなところで、いろんな冷麺を食べてきた。でも、なんだかんだ言って平壌冷麺がいちばん好きだ。昔からそんな気はしていたのだが、6月にソウルの「平壌麺屋」を訪れ、9月にもクアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べて、その疑念は確信へと変わった。

平壌冷麺の特徴は、なんといっても蕎麦粉を麺の主原料としていることだ。ツルツルの麺にダシの効いたスープがよく絡み、噛めば蕎麦の香りが口のなかに広がる。まだ本場平壌で冷麺を食べたことはないけれど、平壌冷麺の魅力は十分すぎるほどわかる。

しかし、実は、まだ東京でちゃんと蕎麦の香りがする冷麺に出会ったことがなかった。そんななか、ある店の冷麺は「蕎麦の香りがする」という噂を耳にした。

2014年11月14日金曜日

ベトナム航空の機内食は、うわさ通りうまかった【後編】

(→前編から続く)

提供:フクシ

機内食がうまいらしい」という評判を聞き、期待を胸に乗ってみたベトナム航空。ベトナム経由で成田と東南アジア各国を結ぶルートで、往復4便を利用し、4回の機内食を食べることができた

前編では、ベトナム航空に乗ることになった経緯と、往路2便の機内食を紹介した。引き続き、後編で復路について紹介したい。

2014年11月8日土曜日

ベトナム航空の機内食は、うわさ通りうまかった【前編】


去る2014年9月、2週間ほどの日程で東南アジアへ行ってきた。その際にクアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べたことは、すでにお伝えしたとおりだ。きょうは、その旅行で利用したベトナム航空の機内食について書き留めておきたい。

ひとくちに機内食と言っても、航空会社によってうまいところと微妙なところがあるらしい。僕の印象だと、アジアの航空会社は概してうまい(ただし日系は微妙)という感じである。そして、ベトナム航空もその例に漏れず、機内食がうまいという評判を聞いていたのだ。

まあ機内食を取りあげたブログなんで腐るほどあるので、わざわざ冷麺ブログで取りあげることもないのかもしれない。でも、せっかく写真を撮ったので使わないのはもったいないと思い、ここで紹介することにする。

2014年10月31日金曜日

元祖平壌冷麺 食道園(東京・蒲田)

平壌冷麺 中辛(800円)。2014年8月

8月初旬の昼下がり。どこか行ったことのない街に行ってみたいと考えていたら、盛岡冷麺の名店といわれる、大田区蒲田のあの店のことが思い当たった。

僕が住んでいるのは多摩地域。大田区というのは多摩で言うところの町田みたいなもので、同じ都内にありながら神奈川県側に飛び出している。かといって、南武線と横浜線で多摩と結ばれている川崎・横浜と違い、なんだか体感距離が遠い。だから、この店のことは前々から気になっていたけれど、訪問は後回しになっていた。

それが今回、とりあえずどこか知らないところに行きたいという動機に背中を押され、ようやく念願が叶ったのであった。

2014年10月28日火曜日

八道製麺名家(大久保・職安通り K-SQUARE内)

水冷麺(900円)。2014年10月

新大久保の韓流ビル「K-SQUARE」をご存じだろうか。大久保通りではなく職安通り沿い、しかも新大久保というよりは東新宿に近い微妙な場所にある。それゆえ、大久保によく行く人でも案外、馴染みが薄いかもしれない。かくいう僕がそうだった。

しかし今回、K-SQUARE 3階のフードコートで冷麺が食べられることを知ってしまった。それで、小雨のぱらつく10月のある日、訪れたのである。

2014年10月23日木曜日

IKEAのフードコートでザリガニに悪戦苦闘してきた


ザリガニ。日本ではあまり食べることはないが、実はスウェーデンをはじめとする北欧では食材として親しまれているらしい。食べ方は、ディルで香りを付けた塩ゆで。ザリガニ・パーティという年中行事まである。

Crawfest 2012-86 (7106560837).jpg
Wikipedia Commonsより
Crawfest 2011 (5629497392)
Wikipedia Commonsより

さて、日本でもそんなスウェーデンの食文化に気軽に親しめる場所がある。IKEA(イケア)のフードコートこと「イケアレストラン」だ。今回、イケアレストランを訪問し、そのザリガニと悪戦苦闘してきた。その模様を写真とともにお伝えしたい。

2014年10月13日月曜日

クアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べてきた【後編】

→前編に戻る


冷麺を食べるべく、クアラルンプールの「平壌高麗館」にやってきたわれわれ。訪問の経緯店の概要、そして料理を注文するところまでは速報版前編で述べた。では、いよいよ冷麺の話に入ろうと思う

2014年10月9日木曜日

クアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べてきた【前編】


先月下旬、「クアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べてきた【速報版】」を現地からお届けした。帰国後しばらく経ち、やっと時間の余裕ができたので、冷麺の詳細をリポートしようと思う。

訪れたのは、クアラルンプールのいわゆる北朝鮮レストラン「平壌高麗館 (평양고려관, Korea Pyongyang Restaurant)」。あえてクアラルンプールで冷麺を食べようと思った経緯、そしてクアラルンプールと平壌の意外な繋がりについては、速報版ですでに述べた。今回の記事は、その続きということになる。

2014年9月23日火曜日

クアラルンプールの北朝鮮レストランで平壌冷麺を食べてきた【速報版】


【クアラルンプール発】

マレーシアの首都、クアラルンプール。その最大の繁華街であるブキッ・ビンタンから目と鼻の先の裏通りに、朝鮮料理レストラン「平壌高麗館」がある。

そう、ここは北朝鮮政府系企業が経営するとされるレストラン、いわゆる "北レス" だ。

あまり知られていないが、クアラルンプールには平壌からの直行航空便が飛んでいる。運行するのは、北朝鮮の国営航空会社である高麗航空だ。直行便があるということは、食材の輸入などの面で有利に違いない。

しかも、事前に得ていた情報では、「平壌高麗館」にはその高麗航空の乗務員一行も食事に来ることがあるという。

ここに行けば、北朝鮮を訪れずとも、本格的な平壌冷麺にありつけるかもしれないーー。そんな期待を抱きながら、9月21日の昼、Googleマップを頼りに「平壌高麗館」へ向かった。


ところが、その期待は呆気なく裏切られた。いや、冷麺に何か問題があったとかではない。そもそも店が営業していなかったのである。看板を見る限り、毎日11時30分から営業しているはずなのだが...。

とはいえ、ここで諦めるわけにはいかない。旅程の都合上、次のチャンスは23日の昼だ。そういうわけで、23日昼、われわれは再び「平壌高麗館」へと向かった...。

忘れないうちに味の感想を書き留めておきたいところだが、貴重な旅の時間をこれ以上、ブログの更新に使うのはもったいない。


というわけで、本記事は「速報版」ということにして、続きは帰国後に書こうと思う。

お楽しみに...。

2014年9月14日日曜日

それでも、「板橋冷麺」は冷麺好きの救世主だ。

水冷麺(650円)。2014年7月
2014年春、韓国の冷麺専門店が新大久保に上陸した。その名は「板橋冷麺」。板橋といっても東京の板橋とは何の関係もない。韓国・忠清南道の「板橋(パンギョ、판교)」という地名から来ている。

まあ、冷麺専門店と聞いたら行かないわけにはいかない。というわけで、7月のある昼、訪問してみた。

地図を見る限り、大久保駅(中央線)からは徒歩3分、新大久保駅(山手線)からは徒歩5〜6分のはずだ。今回は新大久保から向かった。しかし、大久保通りに立ち並ぶさまざまな飲食店の誘惑を断ち切りながらの道のりは、10分以上にも感じられた。大久保駅の脇から細い路地を抜け、小滝橋通り沿いに出ると、その店はあった。

店先には、「40年伝統の自家製冷麺」「オーダー受けてから麺を作ります」といった言葉が並ぶ。さて、その実力はいかに。さっそく入店してみる。


2014年9月6日土曜日

【閉店しました】地上げに抵抗する220円ラーメン屋「鳥竹」(神奈川・川崎)【後編】



なぜ、コインパーキングのド真ん中に古いバラックが1軒だけ取り残されているのか。前編では、3年前の写真を紹介しながら、暴力団絡みの地上げを経て生まれたこの異様な光景について説明した。

さて、時期は飛んで、2014年9月。この「鳥竹」が、思わぬ変貌を遂げていた。

(なおこの記事には、9月の訪問時に撮影した写真のほかに、10月、フクシ氏が再訪・撮影して提供してくれたものを参考のため掲載しています)


2014年9月5日金曜日

【閉店しました】地上げに抵抗する220円ラーメン屋「鳥竹」(神奈川・川崎)【前編】

ラーメン(220円)。2014年9月

用事があって川崎を訪問。以前から気になっていた「食道園」(蒲田の食道園とはたぶん関係ない)で、冷麺でも食ってから帰ろう——。そう思って、ぶらぶらと歩いていった。そしたら、意図せず、かつて何度か訪れたことのあったあの場所に行き着いた。

2014年10月(提供:フクシ)
2014年10月(提供:フクシ)

川崎市川崎区東田町9。いわゆる「地上げ」の現場である。それも単なる地上げではない。いくつもの暴力団組織が入り乱れ、泥沼化した、曰く付きの場所なのだ。

2014年8月28日木曜日

中華食堂一番館 高田馬場店(東京・高田馬場)

盛岡スープ冷麺(550円)。2014年7月
「中華食堂一番館」というチェーン店をご存じだろうか。東京都心を中心に約20店舗(2014年8月現在)を展開する中華料理店で、メニューは日高屋に近いが、日高屋よりも安くてうまい。ここの「かけらーめん」(290円)や「チャーハン」(380円、スープ付き)には、お金のないときよくお世話になった。

この「一番館」が、ことしも冷麺を出していた。その名も「盛岡スープ冷麺」。いちおう盛岡冷麺を意識しているんだろうけど、見た目はかけ離れている。具は見るからに冷やし中華の使い回しだ。ハムとか乗ってるし。卵もただのゆで卵ではなく、ラーメンについているような煮卵だ。

「スープ冷麺」という名称になったのも、スープを売りにしてるからというよりは、冷やし中華との混同を防ぐためなのかもしれない。

麺とスープはちゃんと冷麺用のものを使っているようだった。スープは冷麺にしては味が濃いめで、飲み応えがある。業務用の冷麺スープを濃いめに溶いてるのかもしれない(オリジナルだったらすみません!)。キムチもかなりパンチの効いた味付けで、これをスープに溶くとまた雰囲気が変わる。

酢をかけたければ、卓上にある餃子用の酢を使えばいい。冷たくしたければ、周囲の目を盗んで水のコップから氷を何個か移そう。まあ、別に上品な店ではないので堂々とやってもいいと思うけど。


2014年8月17日日曜日

草の家(東京・赤坂)

「自家製手打ち冷麺」ランチセット(1,100円)の冷麺。ハサミを入れたあと
東京で韓国・朝鮮料理店が多い場所というと、新大久保、上野、三河島ぐらいまではすぐに名前が挙がる。だが、以外と見落とされがちなのが赤坂だ。

なぜ赤坂に韓国料理屋が多いのか、いまいちよくわからない。赤坂は、首都・東京のなかでも、特に政治・経済の中心と言える地帯の一角を占める。TBSや赤坂サカスが位置し、すぐ東には首相官邸や国会議事堂もある。

そんな赤坂には、もうひとつ、「夜の街」という顔がある。新大久保の場合、歌舞伎町の韓国人ホステスたち御用達の店が職安通りのほうにいくつかあるという。赤坂に韓国料理屋が集中していることにも、同様の背景があるのかもしれない。

さて、今回訪れたのは、その赤坂の焼肉店「草の家」。山王神社の鳥居を背に赤坂への道を歩いていくと、左側に「草の家」の看板があった。地下鉄赤坂駅2番出口のすぐ近く。1階に「やまや」が入っている雑居ビルの3階だ。

ガラス張りのエレベーターに乗り、店へ入る。高級感のある暗めの店内は思いのほか広々としていて、丸い大きなテーブルがいくつも並んでいる。平日の昼とあって、赤坂で働くサラリーマンで賑わっているんだろうと想像していた。しかし、13時を過ぎていたからか、先客は1人だけ。やはりサラリーマン風の男性だ。焼肉は食べ終えたのか、サラダバーのサラダをむさぼり続けている。

そう。「草の家」のランチの特徴は、なんといってもこのサラダバーだろう。すべてのランチメニューにつく。安楽亭みたいなファミレス系を除いて、焼肉店でサラダバーというのはあまり聞いたことがない。オフィス街のランチにはよくあるのだろうか。

そういうわけで僕も野菜をむさぼっていると、冷麺が出てきた。店員さんが麺にハサミを入れてくれるのだが、その際に「切ってもよろしいですか」とあらかじめ一声かけてくれる。切るなという客がいるのかもしれない。

麺はサツマイモ粉がメインらしい。ネット上では「咸興からサツマイモ粉を仕入れている」という記述も見かける。かつてメニューにそう書いてあったそうだ。咸興といえば北朝鮮第2の都市であり、咸興冷麺の故郷。しかし、少なくとも今回見たランチメニューにはそんな記述はなかったし、北朝鮮への経済制裁が行われているいま、もはやサツマイモ粉を輸入することなど不可能だろう。

さて、その麺。細めだが適度にコシがあって、噛みきろうと思えば噛みきれる感じ。好みのタイプの麺だ。スープもうまい。そして具は細く切ってあるので、麺と、具と、スープとが絶妙に絡む。すすりあげる。口の中に幸せが広がる。最高だ。

かくして「草の家」の冷麺は、僕の脳内冷麺ランキングの上位にランクインした。しかし、ここは赤坂の高級店。いつか、こんな店で焼肉食って、締めにこの冷麺をすすれるようなご身分になりたいものである。それまでは、このサラダバーつきのランチセットでがまんしよう。

2014年7月31日木曜日

ローソンの「盛岡風冷麺」

盛岡風冷麺(税込499円)。2014年7月
東北地方のセブン・イレブンでは、夏になると盛岡冷麺があるらしい。そのことを福島県出身の友人がしきりに自慢してくるので、悔しくて調べたら、ちゃんと東京にもあった。ただ、セブン・イレブンではなくローソンだ。ふだんローソンはめったに使わないので見落としていた。

冷やし中華と同じように、麺、つゆ、具が分かれている構造。具はキュウリ、肉、キムチ、ゆで卵、刻みネギ。盛岡冷麺の特徴であるスイカは入っていない。あと、辛いタレがついている。これらを自分で盛りつけて食す。この手の商品の宿命として、麺はお互いに貼り付いて団子のようになっている。だから、麺につゆを注いだら、具を盛りつける前に箸で麺をほぐしておくのが無難だろう。


で、食した感想はというと、正直なところ「これじゃない」感が拭えなかった。たしかに、麺はちゃんとコシがあって、盛岡冷麺の特徴を抑えている。しかし、つゆが甘い。保存性を増すために糖分を多めにしなきゃならないとか、そういう事情もあるのかもしれないけど、僕としてはちょっと苦手な感じの甘さだ。酢があればそれで甘みを誤魔化せるのだが、酢は付属していない。

そして、これもコンビニフーズの宿命なのだろうが、あんまりちゃんと冷えていないのである。冷麺に期待される「冷」の度合いは、ざる蕎麦や冷やし中華に求められる「冷」よりも高水準だ。素麺と同じく、氷が浮いているぐらいがちょうどいい。しかし、このローソンの冷麺は、売り場の冷蔵ケースに陳列されている時点でも、きっとそんなに冷たいわけではない。そして、それを購入し、暑いなか袋に提げて持ち帰るので、さらにぬるくなってしまう。食べる段階では、下手したら20度ぐらいになってる。これでは冷麺気分は味わえない。

とはいえ、あなたの街のほっとステーション(だっけ?w)で、いつでも気軽に冷麺が手に入るのである。その点に関しては素直に感謝しないといけないし、こうやって文句は言いつつも、また買っちゃうんだろうなあ。酢と氷を自分で用意して食えばいいわけだしね。

2014年7月30日水曜日

平壌麺屋(ソウル・東大門)

冷麺(税込11,000ウォン)。2014年6月
ソウル。地下鉄・東大門歴史文化公園駅のすぐ近くに、平壌冷麺の専門店がある。その名も「平壌麺屋 (평양면옥)」。

創業者は平壌から渡ってきた人で、いまは3代目が継いでいるという。解放後の混乱期や朝鮮戦争中、北から南へ渡ってきた人が大勢いた(もちろん逆もたくさんいた)。そういう人が平壌冷麺や咸興冷麺の店を出したケースがけっこうあるようで、ソウルにもその手の冷麺専門店がいくつかある。

とういうわけで、今回、そんな店のひとつである「平壌麺屋」を訪れてみたわけだ。ここを選んだ決め手は、ネット上の評判、そして何よりもこの単刀直入な店名である。

駅から南へ少し歩くと、店がある。見逃すことはまずない。隣接する機械式駐車場のタワーに、でっかく「平壌麺屋」と書かれているからだ(駐車場が店のものなのかはわからない)。

店内は広い。四角いテーブルがずらりと並び、天井に白い蛍光灯が煌々と輝く。厨房に目をやると、たくさんの従業員がせわしく調理にいそしんでいる。いささか殺風景というか、少し古びた社員食堂のような印象である。少なくとも、来店前に想像していた「3代続く平壌冷麺専門店」のイメージとは違った。

しかし、だからといって雰囲気が殺伐としているわけではない。店内はけっこう賑わっていて、ぱっと見た限り、客は中高年がほとんどだ。そして、普通に冷麺を啜っているグループもいれば、肉料理やマンドゥを並べて昼間からソジュジャン(焼酎グラス)を傾けているグループもいる。

厨房に近い奥のほうの席に着き、冷麺を注文。値段は11,000ウォンである。日本円で1,100円ぐらい。韓国の物価からすれば、かなり強気の価格設定だ。この値段を考えれば、客層が中高年中心なのも納得がいく。

白菜キムチとトンチミ(大根の水キムチ)が出てきて、まもなく冷麺も出てきた。蛍光灯に照らされて、透き通ったつゆがますます透き通って見える。そして、つゆの真ん中に茶色い麺の島があって、その中央に具のタワーがそびえている。なるほど、やはり平壌冷麺といえばこのスタイルなのか。ハサミが用意されていないので、麺は切らずにこのまま食べるようだ。この点も平壌冷麺らしい。

麺の島に箸を入れ、ほぐし、すする。不思議な麺だ。日本蕎麦ほどではないが、かなり「蕎麦蕎麦しい」。冷麺らしいコシを具備していながら、いとも容易く噛みきれる。本場の平壌冷麺は蕎麦粉100%だと聞いていたけど、蕎麦の比率が高いとこうなるのだろうか。

そしてこの麺、つゆがよく絡む。つゆは肉の出汁がしっかり効いていて、淡泊だけど抜け目の無い感じ。例のごとく、最初の味見を終えたら早々に酢とキムチをブチ込んだ。それからは、ほぼノンストップで一心不乱に麺を啜り続けたのであった。

いままで出会った冷麺のなかでは、僕の「理想の冷麺」像に最も近いのが、この「平壌麺屋」の冷麺だ。なにしろ、この蕎麦っぽい麺が気に入った。

目下、平壌に行く可能性よりはソウルに行く可能性のほうが高いので、またこの店に来てみたい。あ、だけど別の冷麺専門店を開拓してみたい気もする。ただ、どっちにしろ問題なのが、韓国では「ぼっち飯」があまり一般的ではないので、1人だと行きづらいという点だ。今回はよかったけど、次回もいっしょに来てくれる人がいることを願うしかない。


こちらは携帯で撮った写真

2014年7月20日日曜日

南大門のり巻き(東京・大久保)

水冷麺(980円)。2014年6月
新大久保の大久保通り沿いには、判で押したかのごとく似たような韓国料理屋が軒を連ねている。そんななかで、あえてこの「南大門のり巻き」の特徴を挙げるとすれば、3階建ての建物を丸々専有する大型店だという点であろう。

「韓定食南大門」と「南大門のり巻き」という2つの看板を出しているので、一瞬、階によって違う店なのかと思ってしまった。「あれ、1階?2階?」という迷いの表情を浮かべていると、店の前でキムパプ(のり巻き)を売りつつ客引きをしているオバチャンがそれを察知。どの階も同じだから、と、1階へ入るよう促してきた。

平日のランチタイム。席に着いて注文を済ますと、小皿に乗った6種のパンチャン(おかず)が出てくる。この日は2人で訪れたのだが、人数によってパンチャンの品数や量がどのように変わるのか、少し気になるところ。キムパプを売りにしている店なので、キムパプも頼んでみた。

まわりを見わたすと、女性2〜3人組の客がちらほら。食後のおしゃべりに花を咲かせている。ときおり、さっきのオバチャンが店内に入ってきて、ホール兼調理を担当していると思われるニイチャンにキムパプや弁当の注文を伝える。そんな光景を横目に見ながら、パンチャンとキムパプをつまんで冷麺を待つ。

で、まあ、冷麺自体に関して特筆すべきことはない。たまにある、つゆの一部がシャーベット状になってるタイプ。冷麺は冷えてるからこそ冷麺なんだし、こういうのも全然アリだと思う。

ただ、僕の座った席がたまたま冷房のよく当たる場所だったので、冷麺との相乗効果で体の内と外から冷え切ってしまった。会計を済ませて外へ出ると、大久保通りを流れる6月のぬるい風が、妙に心地よく感じられた。

2014年7月19日土曜日

元祖平壌冷麺屋 川西店(神戸・長田)

冷麺 大(900円)。2013年8月
うだるような蒸し暑さのお盆過ぎ、在日コリアンが多く暮らす長田を訪れた。めざすは「元祖平壌冷麺屋 本店」。地下鉄長田駅からJR新長田駅の方向へと歩いて行った。そしたら偶然にもこの「川西店」の前を通りがかったので、まあここでいいかということで「川西店」の冷麺を味わってみることになった。

あとで知ったことだが、ネット上の評判には「本店」よりも「川西店」の冷麺がうまいとするものもある。また、1階席・2階席に分かれていて手狭に感じる「本店」に比べ、「川西店」は余裕のある作りになっている。地元のオバチャンたちが在日朝鮮語で談笑していて、レジ前のラックには在日コリアン団体の発行する雑誌が置かれていた。

さて、肝心の冷麺である。店名に「平壌冷麺」と掲げているものの、ここの冷麺は、いわゆる現代の平壌冷麺とは大きく異なる。盛りつけといい、太くて白い麺といい、どことなく盛岡冷麺を連想させられる。実際、盛岡冷麺の老舗店には「平壌冷麺」を標榜しているものが少なくない。かつて日本でも「朝鮮冷麺といえば平壌が本場」というイメージが強かったという。なので、実際には平壌と直接の関係がなくても、そのブランドイメージにあやかって「平壌冷麺」の看板を掲げるようになったケースが多いのではないかと思う。政府の統計によれば、日本に住む朝鮮籍・韓国籍の人々のうち朝鮮半島北半分にルーツを持つ人は0.5%程度である。

ところが、神戸日報の記事が伝えるところによると、「元祖平壌冷麺屋」の創業者夫妻は実際に平壌出身なのだという。70年間、3代にわたって平壌冷麺の味を守りつつ、異国の波風に揉まれてきた。そして、日本人の好みを反映してかどうかはわからないが、盛岡冷麺にも似た太くてコシの強い麺を出し続けてきた。一方、本場の平壌でも冷麺は独自の進化を遂げ、「玉流館」に代表される蕎麦100%の細麺が主流になった。

同じ「平壌冷麺」でも、平壌と長田とで、ここまで違う。土着化した日本の「平壌冷麺」が紡いできた新たな伝統。その70年という歴史の長さを感じる1杯だった。



2014年7月18日金曜日

半兵ヱの「昭和冷麺」(280円)

昭和冷麺(280円)。2012年9月、半兵ヱ高田馬場店にて

居酒屋チェーン「半兵ヱ」の冷麺。メニュー上は「昭和冷麺」という名前である。「半兵ヱ」は薄利多売を売りにしているだけあって、おつまみも飲み物もお財布にやさしい価格設定である。この冷麺も決して例外ではなく、なんと1杯280円である。驚異的な安さだ

2014年11月、半兵ヱ八王子店にて

いちおうは朝鮮冷麺を意識していると思われるが、実は麺が「マロニー」もしくはそれに類する何か)なのである。「昭和冷麺」というネーミングの由来も、この安さの秘訣も、そこにあるのだろう。

麺はマロニーなので、冷麺にしては太い。とはいえ、盛岡冷麺だったらこのくらい太いのもないことはなさそうだ。麺が太いゆえ、写真だと冷麺全体が小さく見えるかもしれない。しかし実際には、280円だからといってボリュームも決して少ないわけはなく、韓国・朝鮮料理店で供される標準的な冷麺に引けを取らない。

同上

邪道といえば邪道だが、「発想の勝利」ということで素直に評価したい。そもそも、マロニーはジャガイモ澱粉を主原料としている。朝鮮半島にもイモを用いた冷麺があることを思えば、あながち間違っていないと言える。まあそれ以前に、280円で冷麺気分が味わえるのだから何だって許せるではないか

====================
2014/11/06 タイトル変更、加筆、写真追加

韓国館(ウズベキスタン・タシケント)

冷麺。2012年9月
高麗人が数多く住むウズベキスタン。その首都タシケントの中心部に、韓国料理店「韓国館(한국관, Хан Кук Кван )がある。韓国・朝鮮系住民のみならず、この地でも暮らす日本人にとってもオアシスとして機能している様子だった。われわれが訪れたとき、別の席で日本人ビジネスマンと思われるグループが談笑しながら食事をしていた。そういった客層を反映してか、朝鮮料理に加え、「うどん」「トンカツ」など日本料理も出していた。店員は韓国・朝鮮系、あとロシア系の人がいたかな。

1週間にわたってウズベキスタンを訪れ、その最初と最後の食事をここ「韓国館」でした。1度目は、中央アジアで朝鮮料理が食えるという物珍しさから。2度目は、慣れない中央アジアの食事で完全に機能不全に陥った胃腸を癒やすため。

あれから2年が経ったが、なぜかここの冷麺の味ははっきりと思い出せる。麺はいわゆる平壌冷麺よりは少し太いものの、ちゃんとした蕎麦系。氷混じりのつゆは出汁が利いていていて、酸味と甘みも適度だ。途中から、パンチャンの白菜キムチを泳がせて味を変えてみた。キムチはよく漬かっていて、粗挽きの唐辛子がたっぷり入っている。

遠い中央アジアで冷麺が食えるありがたさによる補正を差し引いても、この冷麺は人生史上でも5本の指に入る。「韓国館」に来たなら、下手に定食のたぐいを食うよりは、この冷麺を食ったほうがいい。






おおまかな位置

2014年7月17日木曜日

板門店(東京・上野)

冷麺(950円)。2014年4月
主に名前が理由で、前から気になっていたこの店。 あの一帯にしては小綺麗な焼肉屋さんだけど、値段も高め。



故月(大分・別府)

冷麺 並盛(650円)。2014年1月撮影
別府冷麺。中国東北部からの引き揚げ者が持ち込んだのが発祥という。なので、いちおう朝鮮冷麺を由来としているようだが、あまり原形を留めていない。つゆは魚介系の出汁が聞いていて、甘みと醤油味が強い。完全に和風。麺は太い小麦の麺で、コシはあんまりないけど歯応えはかなりある(つまり、単に硬い)。冷麺というよりはうどんを食っている気分だ。冷麺を食いたいときに食うものではなく、別物と割りきったほうがいい。

「さんふらわあ」などが発着する別府国際観光港から徒歩約5分。乗船前の腹ごしらえにちょうどよかった。

焼肉大門(東京・上野)

冷麺(940円)。2013年12月

なぜかサクランボが乗っている。焼肉とキムチもうまかった。特に、ここのカクテキはよく漬かってて毎回感動する。